明日は「五月五日」です。
毎年、実家の鎧兜を見る度に
心に浮かぶことがあります。
この鎧兜は
明治39年生まれの祖父の物。
大きな繊維会社の跡継ぎとして
生まれた祖父は
贅沢三昧の人生でした。
苦労無くその地位や財を
手に入れた祖父だから
陰で悪く言われることも
多かったのです。
高慢で威圧的な一面もある祖父でした。
内孫で可愛がられて育った私でも
自分から甘えた記憶は一つもありません。
でも、本当に大好きでした。
多くの事を祖父から教えられました。
幼い頃は
毎日、本を読んでくれたのです。
「グリム童話集」
「日本の昔話集」
「アンデルセン童話集」
「イソップ童話集」
を1話か2話読んでくれました。
祖父の書斎には
壁全面に厚い本が並んでいました。
本の虫だった少女時代を
過ごしたのはその影響でしょう。
ドイツの会社と取引していたので
ドイツ語のいくつかの言葉を。
幼稚園生の私が教えてもらいました。
神社仏閣を大切にしていたので
お参りの作法も自然と知れました。
高級な料亭を渡り歩いた祖父だから
女性としての気の利かせ方も
端々でヒントをもらいました。
平成の始めに他界するまで常に
上質な着物を綺麗に着こなしていました。
祖父の洋服姿は見た事がないのです。
昭和40年代というのに
クリスマスにサンタの格好をして
11人の孫にパンダのぬいぐるみを
袋から配ったのです。
サプライズの楽しさを幼いながらに
知ったのです。
それなのに
他の人の祖父へのイメージの影響を
受けてしまっていた私は
いつも受け身でした。
「ありがとうって言っただろうか。」
「おじいちゃん、格好いいね。
って言えば良かった。」
「お気に入りのお店に連れてって
甘えれば良かった。」
「祖父の一番の夢を聞きたかった。」
「一番うれしかった日を聞けばよかった。」
自分が年を重ねるごとに
聞きたかったことが増えてきます。
どうにもならない後悔です。
人とは、いろいろな場面で別れがあります。
「その時その瞬間に相手に出来る事を
大切にしていきたい。」
私の根底にある思いです。
それが祖父からもらった
一番の贈り物かもしれないと
今の私には思えるのです。
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